
くんくん。あ~いい匂い。
オーブンから出したばかりの、焼きたての食パンは、
耳を近づけるとパリパリと皮が乾いた音を立てている。
なんていい音!
今日は、母があん食(あん入り食パン)を焼いている。
発酵具合を気にしていた父も、上手く焼けているか少し気になっているようだ。
中のあんは果たして思い通りに渦巻いているのか?
「焼きたてパンってきっと中も熱いんだよね?」
なんてわざとらしくいいながら、試食を誘う私。
「熱いわよ、食べてみる?でも焼きたては切りにくいのよね」と母。
「ちょっとだけ、中が渦巻いてるか見てみようよ」
「そうね、そうしましょう。・・・ああ、なかなか上手に渦巻かないわねえ。沈むのねえ」
「でもおいしそうだよ。味は一緒よ。
お父さ~ん、食パン試食するけど、いる?あ、歯を磨いちゃったか」
いつもなら歯磨きをしたら食べない父も、
「いや、もらおうかな」なんてやってきた。
ほかほかのあん食の端切れを、立ったまま台所で試食してみる大人3人。
レンブラント的?ミレー的?ラトゥール的?
「焼きたてパンのある光景。」
スポンサーサイト