fc2ブログ
祖母
祖母から電話があった。
ハガキにいつでも電話ちょうだいね。と書いたからだ。

私には4人の祖父母がいたけれど、
今も元気でいてくれるのは、母方の一人の祖母だけ。

私はおばあちゃん子だったわけではなく、
どちらかと言うと、明るく活発な住職のおじいちゃん子だった。

祖父の目に入れても痛くない可愛がりよう。と違って、
祖母はお寺を取り仕切り、凛とした厳しい佇まいで、
孫に優しくないわけではないけれど、しっかり躾もされた記憶もある。
なので、祖父の存命中はあまり近寄らなかったし、
特に心に残る話をした記憶もあまりない。
記憶といえば、足の傷がずっと癒えなかった祖母が、
毎晩パンパンにはれあがった足を、座り込んで丁寧に治療していた姿くらいだ。

そんな祖母と、気持ちが強く通じるようになったのは、
祖父の看病の時からかもしれない。
病気が進行し、だだっ子のようになっていく祖父を、
泣き言も愚痴ひとつ言わずに、あやし、励まし、
十分体の動かない自分でできる事を、精一杯、淡々とするのを見てからだ。 

自分の足がよく動き、人の世話にならず、なんでも出来たなら・・・
とどんなにか思ったはずだ。 
それがよくわかったから、私は祖母の足になろう。と思って、
重いものを運んだり、遠いものを取ってあげたり、
そして、祖母に買ってきて欲しいものをいつも聞くようになった。
迷惑を皆にかけたくないと思っているから、
滅多に欲しいものを言わずにすます祖母も、
以来、私には言いやすいらしい。いろいろ注文してくれる。
そのことが、私はとても嬉しい。

わたし『なんか欲しいものある?持っていくか送るかするけど。。。』

祖母『う~ん、何にもないけど、
ほら、なんやら、流行作家の、ほれ、あれが読みたいなぁ。』

『んん?ほれ、あれじゃわからんよ。』

『ん~、なんやら韓国かどこかで大人気のあるやろ?』
 
『おばあちゃん、それは韓国でなく中国じゃないの?
NHKで見たニュースじゃない?わたしも見たよ。村上春樹でしょ?』

『ふん、それやわ。こうといて。 おばあちゃん、前、その人の一回は読んだけどな。』

『へえ!読んだん?ノルウェイの森?どうだった?面白かった?』

『うん、どうやったかいなぁ。よかったような気するで・・・
そうそう、その大人気の流行作家のこうといて。読んでみたいわ。』


祖母、86歳です。
たえず新しい世界に興味を持ち、知ろうとする姿勢に心から頭が下がります。
体力も足腰もままならないので、外出はほとんど出来ないし、
家族以外と話をする機会も今ではぐっと少ないだろうと思います。

それでもいま毎日、心ほがらかに保てているのは、
いまなお前を向いて生きているという事。
そして、毎日自分の理想のあり方を求め続けている、
祖母の大変な努力の賜物だと思います。

地味な、でも確かな努力をし続けている祖母は、
わたしの尊敬する女性、ナンバーワンです。


村上春樹にどんな世界を読むんだろう。
すごく、興味津々。早く買って送ってあげようっと♪
スポンサーサイト



【2009/11/16 12:30】 | life | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<からくれないに~炉開き | ホーム | 抜けた!>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
→http://amiciashiya.blog45.fc2.com/tb.php/134-e229d7e2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |